硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

カラオケに行った

去年の春から 夫が風呂で歌を歌い始めた

防水機能のあるスピーカーを購入して

スマホからBluetoothを 飛ばす

 

曲と一緒に歌えば 上手く聞こえるせいか

好きな曲を次々に 流している

本人は実に 気持ち良さそうだ

 

部屋まで聞こえる歌声は

お世辞にも 上手いとは言えない

時々外れる 音程とリズム 

まるで 鶏が絞め殺されているような高音域

 

「ご近所迷惑では?」と 心配になり

外に出て 隣家との境界線を歩いてみる

 

風呂場の窓の向こうは

尾根状になった 畑が広がるので

問題はない

 

距離の近い 隣家の居室は

うちの風呂場の 反対側にあるので

開口部を閉めていれば

気にならない 音量だと思う

 

「本人は分からんと思うけど 結構 歌ヒドイよ」

と 私が酷評すると

夫は憤慨して「実力を披露する」と 

カラオケに 連れて行かれた

 

何冊もある 分厚い電話帳のような曲リストから

目当ての歌を探して出して ナンバーを打ち込む

私が最後に行った カラオケの記憶に

「それ何時代のカラオケよ?」と

ゲタゲタと 夫は笑う

 

夫推薦のカラオケ屋に行くと 驚いた

小洒落たフロアに 綺麗なラバトリー

種類の多い 無料のドリンクバー

私はおのぼりさんみたいに

キョロキョロしてしまったが

 

夫は 馴れた様子で

「これ美味しんよ」と 言って

ポップコーンとアイスクリームを

カップに たくさんよそっている

 

それを見た私は 腹の中で嗤った

「そんな“喉イガイガ菓子”と

“喉冷え冷えスイーツ”

今から食べて どうするんだ? 

それで実力とやらを 披露できるのか?」

「もっと真剣に 歌と向き合えよ」

 

「絶対負けない」

私は 心に誓った

夫のAI 採点を 大きく凌駕するべく

のど飴まで準備する程

勝手に気合を入れていた

 

 

結局 4時間近くも 二人で「昭和の歌オンパレード」を

歌いに歌いまくったが

夫の実力は 分からずじまいだった

 

なぜなら 自分の選曲に夢中になり

相手の歌を 殆ど聴いていなかった

タンバリンを シャンシャン入れたり

得点にヒューヒュー 歓声で盛り上げたが

夫の歌の記憶が ほぼ無い

 

久しぶりのカラオケは 凄く楽しかった

100点は出せなかったけれど

歌うことが とても楽しかった

 

今は 私も風呂場で歌い始めた

カラオケの時より 控え目な声で

長湯にならない程度に

 

酷使した一台目のスピーカーが 不調になり

発注した二台目のスピーカーが 届いた

今日から よろしくね