硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

山城跡の祠

週末 愛犬チーちゃんとの散歩は

自宅近くの山コース

頂上付近に駐車場

遊歩道を上った先に 小さな広場ある

木製の遊具があった頃は

家族連れや サバイバルゲームをする人達が来ていたが

撤去されてからは 訪れる人も減っていた

 

先月から 駐車場でキャンプをする人を

見掛けるようになった

始めは一人だったが

今日は車が4台 テントが3張りもあり 驚いた

トイレはあるが 水道は雑用水 

夜には 猪もうろつく場所でもある

 

午前7時前 ターフの下で椅子にゆったり腰掛け 

読書をする男性を後目に

遊歩道を上がり 広場を抜け

今度は道を下る

その先に 戦国時代の山城跡がある

❲「城郭放浪記」よりお借りしました╱左側が広場・駐車場に通じる道❳

 

高台になった城跡を ぐるりと回れるように

遊歩道が作られている

木々の間から 何か支柱が建ててあるのが

下から見えて 気になっていた

 

落城した城跡に

足を踏み入れるのは 気が進まなかったが

登れそうな斜面を選んで 上がってみた

 

山城跡地 二の丸辺りになるのだろうか

ケーブルTV のアンテナが 設置してあった

無許可とは思えないが このような場所に建てなくてもいいのに

何だか釈然としない

❲西側の端に建てられている ╱ 三の丸周辺?❳

 

支柱の正体が判明したので 引き返すも

上って来た場所が 分からなくなった

下りる場所を探して うろうろ歩き回るうち

  

大きな檜の側に建つ

苔むした祠が 眼にはいった

前に回って見ると

祠は 酷い有り様だった

 

背面の壁は中央が割れて 隙間ができている

奥には 小ぶりな汚れた酒瓶が三つ

御神体や仏像は見当たらない

 

お供え用の 二つある白い茶湯器は 転がったまま

陶器の花立ての一つは割れて 

茶色く枯れた枝だけが残っていた

枝ぶりから シキミに見えた

 

神様ではなく 仏を祀ったものだろう

戦で亡くなった者への 慰霊の祠と思われた

 

とりあえず ティンシャを鳴らして 念仏を唱える

「ここまで入り込んで ごめんなさい」と

謝罪の言葉を添えて

 

荒れた祠を目の前にして

『この状態を何とかしなければ 』と 思う反面 

『縁のない祠に 安易に関わらない方がいいかもしれない』

ぐずぐずと迷っていたら

 

ほぉー... ほーほー

不意に柔らかい 笛の音が聞こえた

オカリナよりも素朴な

土笛のような音色

 

それは 山城跡の外側からで

二三度目吹いては 休むを繰り返し 

メロディーを奏でる様子はない

 

私は 祠に何も手を付けず 背を向け

笛の音の鳴る方へ 歩き出した

 

この笛の音は 駐車場に居たキャンパーの誰かが

気ままに 笛を吹きならしながら

此方に向かっているのだろうと思った

 

高台の端まで来ると 歩きやすい小道があり

その先に広場に戻るに 一番近い道が見えた

足元は下りるに最適な なだらかな斜面が広がっている

「ラッキー♡」

先行するチーちゃんに

「(リードを)引くなよ 引くなよ」と 声をかけながら 

落ち葉の厚く積もった斜面を ゆっくり下りた

その頃にはもう 笛の音は聞こえなくなっていた

❲堀切1周辺を下りながら振り返る❳

広場に戻る道を歩きながら 

然り気無く 周囲に目をやるも

人の姿はなかった

『変だなぁ』

そう思った瞬間

ほぉー.... ほーほー

今度は背後から 聞こえた

山城跡の方向だ

 

ほー ほー... 

ひゅーーぃ....

少し高い音色が長く響いて 笛の音は途絶えた

 

『吹いていた人と 入れ違いになったのかもしれない』

あれこれ考えを巡らせるのは 止めて

『きっと あれは野鳥の声』

そう思う事にした 不思議な出来事