硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

白滝のるり姫様

偶然 夫と休みが重なった水曜日

お昼ご飯を済ませた後

夫からの「『白滝』見に行ってみん?」と いう

突然の提案に乗って 出掛けた

 

昨日までの雨が止んで

その日は 朝から良いお天気だった

自宅から車で40分

「車から見える」と言っていた目印も見当たらず

引き返して ようやく小さな案内板を見つけた

 

駐車場から 人家の庭先を抜けて

遊歩道に入ると

ザーザーという 水音が響いて来た

 

川幅の狭い渓谷は

両側に木々が生い茂り

濃い影を 落としている

 

階段と休憩スペースが

交互に配置された遊歩道は

苔むしていた

久しぶりに聞く 川の音で

心が落ち着く



本来賑わう 紅葉時期ではないせいか

その日出会ったのは 下山中の

中年カップル一組だけだった

 

思ったより 滝に高さがあり

雨のせいだろう 水量も多く

ゴーゴーと轟く 落水音と

水飛沫が掛かる程の 勢いと美しさに

心が踊る

 

景色を楽しんだり

写真撮影に 夢中になっていたが

各休憩スペースに立ててあった

「紙芝居風/るり姫伝説(全14枚)」の一枚に

初めて目を通した

[4枚目]

 

それまで 素通りしていたので

物語は 中盤に差し掛かっていたが

主人公のるり姫(滝之城城主 津々喜谷氏の奥方)は

戦国時代の人と知り

不思議な縁を感じた

[5枚目 / 7枚目]

 

私が週末にお参りする 落城跡地の祠

そこで戦い 命を落とした人達と

同時期に 存在していた姫だった

[8枚目 / 9枚目]

 

それから 立て札の紙芝居を読み進めるうち

観光気分が 吹っ飛んだ

パワースポットの 晴れ晴れ気分が

心霊スポットかもと 緊張に変わった

[10枚目]

 

数年前には 家族や家臣と

花見を楽しんだ春の白滝

[2枚目]

 

城は滅び 逃げ延びた雌滝(高さ60m)の上から

幼い我が子を抱いて

滝壺に身を投じた るり姫

それに従い 次々に後を追った侍女達

[11枚目 / 12枚目]

 

乱世の時代の

このような落城悲話は

各地に残されている事だろう

『夢わらべ工房のお地蔵様↑』

 

『竹竿の先(右側)が落ち口』

 

滝の落ち口にある 大きな観音様に浄財し

念入りに 手を合わせたが

夫は興味無さげに 素通りしただけだった

[13枚目]

厳かな気持ちで

粛々と下山を始めた私の背後から

「しんどーい」「きつーい」

「階段1000段は登った~」

滝の音で途切れ途切れに

夫の大声が聞こえた

 

風光明媚 山紫水明 台無し!

「...るり姫様 あの不心得者に

どうぞキツイ筋肉痛を お与え下さい」

私は滝壺に向かって

そっと祈りを捧げたのだった