硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

君を守り隊

私の勤務先は プレス機が同じ社屋に有る為

所属する検査部B は スポットクーラーと扇風機だけで

暑さをしのいでいる

幸い出入口に近いので 人用のドアと荷物用の広い搬入口は

いつも網戸にしてある

 

出入口にある下駄箱の天井付近には 

毎年 燕が巣作りをしていた

今年も一組のつがいが 仲良く雛を育て始めていた

 

ある日の午前中 一番出入口に近い席のSが

鋭い聴覚で異常を察知した

「燕の鳴き方が変!」

 

S-1機 スクランブル発進

10秒後 「蛇が来とるー!」 

救難信号を受信した我々は 通常の業務を中断し

臨戦態勢に入った

 

T機 攻撃及び防御用「ホーキ」搭載の為

自販機 横だ基地に飛び立った

 

O機 捕獲用「ムシアミ」搭載

N機 威嚇用「ホーキ・チリトリセット」搭載し

共に現場に急行

I機 収監用「45㍑ゴミブクロ・ニマイ」を広げ

後を追った

 

しんがり航空母艦 ひろみ号は 

化学兵器「サッチュウザイ」を格納後 発艦し

離れた位置に 停泊していた

 

燕の巣に向かって 真っ直ぐ上っていた

『仇敵スネーク』は

眼下に整列した 我々の方に向き直り 

睨み付ける

 

それを意に介さず  連隊長Nの下知が下る

「これは去年も来襲した屋敷蛇だ 殺さず傷付けず 捕獲したい」

「屋敷蛇 殺しちゃったら うちの会社潰れますもんね」

ポツリとTが呟き 皆が頷く

 

「いいか 車の下及び 草むらに逃げ込まれたら 我々の負けだ」

スネークの落下予測ポイントを押さえ 各自配置につく

「せーの」

連隊長Nが 箒でスネークを壁から引き離した

 

ところが ポイントからズレて

下駄箱近くの 隊員の近くに落ちた 

戦意喪失 阿鼻叫喚

 

現場の程近くに駐屯していた 幕僚コウジョウ長は

「この騒ぎは何か」と 

参謀ジムインに尋ねた

 

ブラインドの隙間から 素早く外を覗いた彼女から

「蛇退治のようです」と 報告を受けると

足早に現場に向かい

網戸の内側から 様子見をしている

蛇嫌いの 母艦艦長に

「皆 怪我をしないように」と

指示を与え 戻って行った

『こんな事で 労災など申請するなよ』と いう事らしい

 

戦いの結末は 呆気ないものだった

『仇敵スネーク』は素早い動きで

箒のディフェンスを掻い潜り

おのがフィールドである 草むらに逃げ去ったのだ

 

「屋敷蛇」を無傷で捕獲して 

結界の外側に当たる 川向こうの田圃に解放するという

我々の計画は 失敗に終わった

 

しかし 燕親子の命を守れたので

本来のミッションを 遂行したと言えるだろう

 

この戦いに要した時間は 15分

その分は昼休憩を削り 通常の業務に当てたのは

言うまでもない

 

「君を守り隊」は 巣立ちの日まで

燕親子の安全を 日々見守っている