細やかな贅沢で「つげの櫛」を購入した
私にというより市松人形の為に
うちに来る市松様は古いお人形ばかりなので 髪が汚れゴワゴワ、パサパサの子が多い
固く絞った濡れタオルで頭髪の表面だけ 軽く拭いてやる
市松人形のお顔は「胡粉」という貝殻等主成分の顔料を使用している為
水に濡れると染みになるので 思い切った汚れ落としが出来ない
椿油を染み込ませた櫛ですくと 柔らかい手触りに変わり 少し綺麗になった気がする
艶のある黒髪になって 喜んでもらえたかな
でも 貴重な髪が抜けてしまうので 続けるのは難しいみたい
実は 市松人形を迎えて アンティークドールに比べて「 お手入れや管理」が
難しい事を初めて知りました
ビスクドールのお顔は「二度焼きの素焼きの磁器」なので
濡れタオルで手軽に拭ける
髪はペイトというフタの上に ウィッグをのせているので 人毛ならシャンプーで洗える
ウィッグ、ピアス、ドレスに靴などを替えてお洒落を楽しめるのは
ビスクドールの発祥が「ファッションドール」(ドレスのカタログ代わり)
だったからだろう
子供の善き遊び相手だった彼女達が 「次世代まで残すべき」骨董品として
大切にされるのは喜ばしい事なのかもしれない
ただ、 私は古いお人形を迎えるとき 畏敬の念を抱かずにはいられない
時を経ても 老いることのない少女を待つのは「流転の旅」
見知らぬ場所で 初めて出逢うオーナーから 新たな名前で呼び掛けられる
応えることは出来ない ただ 見つめ返すだけ
多分 あなたより ずっと永くこの世界をみてきた 硝子の瞳で