硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

ティンシャが届いた

綺麗な音色に惹かれて 購入したティンシャが 届いた 

箱から出して手に取ると ずしりと重い 

 

7種の金属を原料に鋳造された法具を 7メタルと言う 

金(太陽)・銀(月)・水銀(水星)・銅(火星)・鉄(金星)・スズ(木星)・鉛(土星) 

チベット密教古来の占星術にある製法 ということだ

 

7メタルの音色は 場の浄化と癒しの力を強めるらしい 

収納袋と傷防止用フェルト付き

早速 リビングで鳴らしてみた 

「チーン....」 スマホで試聴した音より クリアでよく響く 

「いいなぁ」 もう一度鳴らした 

 

家の中で寝ている 猫の天護はそのままだけど

外を見ると 寝ていた犬のチーちゃんが 起き上がり

尻尾を下げて 嫌そうな表情で離れていく 

 

「君 憑かれているんじゃないの?」

 

そろりそろりと逃げていく

 

人の4倍の聴覚を持つ犬は 高音域を広く聴き取れる 

どうも大きな音同様に この高い金属音が苦手のようだ 

雷や近くで草刈り機の音を聴いた時と 同じ反応をしている 

「ごめんね」 気をつけるよ 

 

野外でも鳴らしてみたくて 犬の散歩時に ポシェットに入れて携帯した 

人家が途絶えた所で 鳴らしてみる

「チーン...」 夜明けの空気のように 澄んだ音 

野鳥のさえずりも 山鳩の声も途切れずそのままだ 

チーちゃんの尻尾も キリリと上がっている 

 

宿根の朝顔? ╱ 白い葉っぱ?

 

目についた 花の写真を撮りながら 山道を進む 

 

突然 先を行くチーちゃんが 此方に引き返すと

目の前で立ち上がり 両手を伸ばして寄り掛かかる 

「?! 」 誰かにかまって欲しい時に 見せるポーズ 

散歩中に見せたことは無いのに  何故? 

手がポシェットに 触れている 

「これを鳴らすの?」 

ティンシャを 取り出すと パッと離れて元の位置へ戻る 

 

道の両側が木立で 一日中 日の当たらない登り坂の途中

ティンシャを鳴らすが 何の変化も感じられない 

それはただ一度だけの 不思議な出来事だった 

松ぼっくりを蹴って」おねだりは何であれ お座りして待つ

 

家の中 庭 山道と 気が向けばティンシャを鳴らして

震える余韻に 耳をすませる 

 

 

「私 疲れているんじゃないの?」 

 

思うように行かない事への 苛立ちと嫌悪 

自分の内に溜め込んだ魔物を 祓うために ティンシャを欲したのかもしれない 

 

そういえば「祓う」という字の成り立ちは

犬を犠牲にしたところからきているらしい 

 

大丈夫 チーちゃんを 怖がらせないように 小さく音を鳴らす

 

ティンシャの 心地よい透明な高音

少しづつ 少しづつ 心も澄んでいくようだ