硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

しば餅を味わう

愛犬の散歩の時 「サルトリイバラ(猿取茨)」を見掛けるようになった 

この丸っこい葉で思い出すのは 伯母が作ってくれた「しば餅」

 

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手で簡単に千切れるが、トゲがあるので注意

 

子供の頃 学校が休みに入ると 一人でバスに乗り 山間部で酪農を営んでいた母の実家へ泊まりに出掛けた 

夏休み しば餅の葉を取ってくるのは子供の役目で 従姉妹と家の周囲 近くの山を回って 籠いっぱい取って帰った 

伯母は白い団子をたくさん作っていた 

その後のお手伝いはせずに 私達はすぐに遊びに出掛ける

疲れて帰れば 茶色い葉にくるまれ 艶やかな白い「しば餅」が できていた 

中のアンコは 程好い甘さのこし餡 

縁側で冷えた麦茶と一緒に従姉妹と食べた 物凄く美味しかった

 

大人になり 夫の実家を訪問した時 台所で湯気をたてている大きな蒸し器が見えた 

ガスレンジの側に立っていた義母が「じいさんが餅作れ餅作れ うるさいけぇ作りよるんよ」とぼやいた 

ダイニングテーブルの上には しば餅の葉が数枚置いてある 

久しぶりに食べられる!ワクワクした

しかし 蒸し器から取り出されたのは 餅ではなく「しば蒸しパン」だった 

正直ガッカリしたが 食べてみるとフカフカの蒸し生地に 甘さ控えめのつぶ餡 

義母の手作りつぶ餡は 凄く美味しい 

しかし この「しば蒸しパン」は 義父が亡くなってからは 義母は全く作らなくなってしまった 

 

サルトリイバラの葉を見てから 無性に「しば餅」が食べたくなって SNS のレシピを見ながら自分で作ってみた 

だんご粉に 市販のつぶ餡 出来は今一つなのに 私は満足だった 

 

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見た目良さげな2個 残りは餡はみ出し組で没

 

華奢な伯母が 7人分の餡を煮て 生地をこねた土間の台所 独りで薪をくべ 羽釜で蒸したのだろう  

あの頃 従姉妹の家はまだ お風呂もご飯も竈焚きだった

小柄な祖母は 山で背負子に たくさん薪を縛って帰って来た 

二宮金次郎は甘いな 祖母は 頭上数十センチ越えの高さまで 枝を乗せていたっけ 

牛舎での作業が一段落して 伯父と従兄弟が縁側で のんびりと煙草を一服 

ざるに並べた 「しば餅」を皆でくつろいで食べた

 

生地をこね 餡を包み 伯母を思う  葉でくるんで蒸して祖母に感謝する

無口な伯父と優しい従兄姉

私が本当に味わいたかったのは この想い出 

しば餅のように 温かい想い出だったのだ