硝子の瞳と猫と

心温まる事 癒してくれるもの 綴っていきたいな

箱に入るのは一度だけで良い

外出前に空箱をそのままにしていた 

スマホの高速充電器が梱包されていた 小さめの箱 

帰宅すると箱が歪んでいた

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これは「あの形」だ 

小さな奴の仕業だと思ったら 大きな奴も加担していたようだ 

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小柄な天護      と    大柄な珠玉(タマ)

 

狭い所に入りたがるのは「胎内回帰願望」と言われる  安心できる場所なんだね 

ふふふ そっと蓋を閉じる 雄猫ちゃんは慌てない 

ちゃんと自分で脱出できるし 私を信頼してくれているからね 

 

「女が男を箱に閉じ込める」小説の一場面を 急に思い出した 

 

まず 江戸川乱歩の「お勢登場」

病弱な夫を軽んじ 浮気をする妻「お勢」 

ある日の昼食後 一人息子とその友人達とかくれんぼに興じていた夫は 誤って押し入れの頑丈な「長持ち」の中に閉じ込められてしまう 

子供達は遊びに飽きてどこかに行き 叫べど叩けど女中も気付いてくれない

恋人との逢瀬を楽しんで 夕方帰宅した妻が 息絶え絶えに弱りきった夫を見つける 

 

彼女はどうしたか? 

「長持ち」から出ようとする夫を押し込め 再び錠をする 

 

阿刀田 高の「狂暴なライオン」

芸術的な才能に恵まれ 行動的なシングルマザーが 既婚者と恋に落ちた 

何事もテキパキこなしていた自分のペースが

男によって乱されることに 戸惑っていたある日

二人が何時でも会える「隠れ家」に案内される 

海外に長期滞在する友人が 彼に管理を依頼した秘密の部屋 

嬉しげな男に「奥様が突然訪ねてきたらどうするの?」と 冷めた声で問う彼女

「ここに隠れたら良い」

彼がひっくり返った亀みたいな格好で 大きなスーツケースに入り 自分で閉じる 

同時にパチンと掛け金がかかる音がした 

 

彼女はどうしたか? 

何もせずその部屋を後にした 

 

やっぱり箱に入るのは 人生の終末 その一度だけでいいと思った

焼かれちゃうけどね

 

あの話の結末? 

前出のお勢さん 夫は蓋の内側に「オセイ」と必死のダイイング・メッセージを刻んでいた 義弟はお勢が殺したと確信する

彼女の不倫も知っていた 義弟の怒りの追及を涙の演技でかわし 財産を相続し うるさい身内から子供と二人でフェードアウトして行った 

 

後出の彼女は 自分本来の生活ペースを取り戻す 

あれから彼からの電話も無い 

あの部屋で スーツケースがカタカタ揺れ くぐもった叫び声が聞こえても やがては聞こえなくなるだろう 

狂暴なライオンに恋は似合わないと切り捨てる 

どちらも後味の悪い結末でした